出産前の夕方に家族で決めること
出産予定が近づいたら、上の子には変わる予定と変わらない予定を短く伝えられます。赤ちゃんの世話への参加は、上の子が選べる安全な役割にできます。睡眠・食事・遊びなどの変化が続くときは、きょうだい誕生だけで片づけず相談できます。
誕生後の変化は一つの型にそろわない
きょうだい誕生は家族の大きな変化ですが、上の子が全員同じ方向へ不安定になるわけではありません。 誕生前後の研究をまとめたレビューでは、怒り、甘え、睡眠、親子のやりとりなどの変化は研究間でそろいませんでした。変化がほとんどない子、一時的に変わる子、誕生前からの困りごとが続く子がいます。
同じ子の経過にも、複数の道筋があります。 米国で誕生前から追った研究では、攻撃、感情反応、睡眠などについて、安定、一時的な変化、徐々に変わる経過が分かれました。統計的に分けた集団は目の前の子を診断する分類ではなく、「赤ちゃん返りなら待てばよい」と決める道具でもありません。
変化が増えた研究もあるため、困りごとを見落とさないことが必要です。 中国の前向き研究では、母親の回答による感情・行動の得点が誕生後に上がりました。ただし、比較対象となる家庭がなく、追跡できなかった家庭も多いため、きょうだい誕生だけを原因とは決められません。
年齢差から家庭の良し悪しは採点できない
研究から「最もよい年齢差」は選べません。 子どもの年齢差は無作為に決められず、仕事、家計、支援者、親子関係、子どもの気質なども同時に異なります。年齢差と誕生後の様子に関連があっても、その差が原因だとは限りません。
年齢別の説明は、予言ではなく言葉選びの参考です。 米国小児科学会の保護者向け案内は、子どもの理解に合わせて新しい生活を説明するよう勧めています。一方、年齢別の助言は介入効果を比べた試験ではないため、「この年齢なら安心」「この間隔なら荒れる」とは判断できません。
怒る、甘える、赤ちゃんの真似をするといった反応だけで、発達や愛着を診断できません。 「赤ちゃん返り」という呼び名でまとめず、いつ、どの場面で、生活にどのような影響があるかを見ます。子どもの反応を撮影して家族外へ見せたり、笑い話として残したりしないことも尊厳を守る選択です。
家庭では予定と大人の配置を先に決める
最初に伝えるのは、上の子の生活に関わる具体的な予定です。 入院中に誰と過ごすか、園の送迎は誰か、寝る前に誰がそばにいるかを、子どもが分かる言葉で伝えます。予定が変わったときは、子どものせいにせず大人から更新します。
上の子だけに使う時間は、出産した人だけの役割にしなくてかまいません。 米国小児科学会は、親、祖父母、ほかの家族と上の子が一対一で過ごす機会を案内しています。特別な費用や教材は必要なく、話す、読む、遊ぶなど子どもが選んだことに短く付き合えます。これは問題行動を防ぐ効果が確認された処方ではなく、家庭で選べる支え方です。
赤ちゃんの世話は、参加するかどうかを上の子が選べる形にします。 タオルを選ぶなど大人がそばで安全を守れる役割を示し、断ることも認めます。「お兄ちゃん・お姉ちゃんだから」と世話を義務にせず、幼い子だけに赤ちゃんの見守りを任せません。
準備が家庭の負担を増やすなら、予定を小さくします。 大人同士で、上の子の生活、新生児の世話、産後の休息を誰が支えるか確認します。特定の人へ負担が集中する、上の子が嫌がる、家族が責め合う状態になったら、その方法を中止し、外部の支援を含めて組み直します。
特別な活動を増やさず、普段の生活を保つことも選べます。 準備した絵本や役割に関心を示さない子へ参加を求めず、園、食事、就寝など変えなくてよい予定を優先します。
生活の変化が続くときは相談へ切り替える
相談の目安は、普段と違う状態が続き、生活に困りごとが出ることです。 厚生労働省は、睡眠、食欲、体調、行動に現れる変化が続く場合、専門家への相談を勧めています。小児科、保健所・保健センター、自治体の子育て相談、園へ、誕生前からの様子と今困っている場面を伝えます。
安全に関わる行動は、理由を聞く前に大人が止めます。 たたく、押す、物を投げる場面では子ども同士を離し、大人が見守ります。休日や夜間に受診判断へ迷う場合は子ども医療電話相談を利用でき、意識や呼吸の異常など差し迫った危険がある場合は救急要請を優先します。
強い感情にどこまで言葉をかけるか迷う場合は、子どもが泣いたときの感情コーチング研究も判断材料になります。
判断に残る限界
誕生前後の研究は、特定の準備法が困りごとを防ぐと証明したものではありません。 中心となる研究は観察研究で、家族が選んだ生活条件を完全には分けられません。家庭で提案した予定共有や一対一の時間に、研究と同じ結果を約束する効果量はありません。
研究参加者は日本の多様な家庭を十分に代表していません。 海外の二親家庭に偏った研究や、ひとり親・再構成家族などを対象外にした研究があります。親族、友人、地域支援者が主に支える家庭も含め、使える大人の配置を家庭ごとに考える必要があります。
一時的な変化と相談が必要な状態を、期間だけで一律に分けることはできません。 誕生前の様子、変化の強さ、生活への影響、安全を合わせて見ます。したがって、年齢差や「赤ちゃん返り」の名称で待つ期間を決めず、家庭で支えられる予定を作り、困りごとが続くときは相談へ切り替えるのが妥当です。
出典
- Volling BL. Family Transitions Following the Birth of a Sibling: An Empirical Review of Changes in the Firstborn’s Adjustment. Psychological Bulletin. 2012;138(3):497–528.
- Volling BL. Introduction: Understanding the Transition to Siblinghood From a Developmental Psychopathology and Ecological Systems Perspective. Monographs of the Society for Research in Child Development. 2017;82(3):7–25.
- Volling BL, Gonzalez R, Yu T, Oh W. Developmental Trajectories of Children’s Aggressive Behaviors After the Birth of a Sibling. Monographs of the Society for Research in Child Development. 2017;82(3):53–71.
- Zhang Q, Wu W, Sheng L, et al. Emotional and Behavioral Changes in Preschool Firstborn Children During Transition to Siblinghood: A Mixed Methods Study. Psychology Research and Behavior Management. 2023;16:2029–2044.
- American Academy of Pediatrics. Preparing Your Older Child for a New Baby: How to Help Siblings Adjust.
- 厚生労働省. こころのSOSサインに気づく.
- 厚生労働省. 困ったときの相談先.
- 厚生労働省. 子ども医療電話相談事業.
- 厚生労働省. こんな時は迷わず救急車を呼びましょう.
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